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担当:岡村祐聡
過去は結核など急性の病気が相対的に多かったが、現代では成人病、生活習慣病、慢性疾患が増えた。病状の変化がゆっくりとした経過であり、初期の頃は大半が無症状のまま進行する。つまり、なかなか死なないが治らない病気が増えた。その結果医療の役割が、cure(救命救急)からcare management(生活のお世話をする)へと変化した。
医療の目的はQOLの向上である。QOLというのは患者さんの心の中にある。患者さんの人生観そのものが医療の最終目的となっている。この場合、医療者の側から「あなたの人生はこうです。」と押し付けることが出来ない。目の前にいる患者さんからその方の人生観をお聞きして、それを実現するためにはどうしたらいいかを患者さんと一緒に考えなくてはならない。そのためにはコミュニケーションがうまく取れて、まず患者さんのケアの目的地をお聞きすることが出来なくては、ケアを始めることすら出来ない。
b)医療情報の増加
マスコミから井戸端会議まで色々な情報源により、患者さんは非常に多くの情報を持っている。テレビで見た最先端の医療技術について、診察している医師より詳しいこともある。しかし、素人が聞きかじった情報なので、正確さや客観性の点で問題があることも多い。
また、慢性、習慣性の病気が増えたため、病状の進行や予後についていろいろなケースが身近に散見できるようになってきた。そのため医師も目の前の患者さんの予後についてはっきりしたことが言えなくなってきた。
例えば、血圧が高い患者さんに、
「ちゃんと薬を飲まなくてはあと何年も生きられないよ。」
と言ったとすると、
「何言ってんですか先生。隣のおばあちゃんは血圧200もあるけど90歳の今でもピンピンしてるよ。」
と言い返されたりしてしまうこともある。こういった状況で患者さんに納得していただいてきちんとしたケアを受けていただくためには、的確なコミュニケーション技法を用いることが出来なくてはならない。
c)権利意識の増大
早くから国民皆保険制度が整備されている日本では、保険医療を受けることが当然の権利であるという意識が強い。さらにマスコミ等の影響で患者としての人権や、治療に対しての自己決定権を主張するようになってきた。
きちんとした理解が無いままに権利意識だけが強く、医療の立場からは(実は本人にとっても)望ましくない選択を主張するような事もある。こんな時、正しい情報を正しく患者さんに理解していただくために、コミュニケーション技法が重要となってくる。
d)価値観(死生観)の多様化
患者さんの持つ価値観が非常に多様化しており、どういう形がベストなのかを医療者の側から一方的に押し付けることが出来なくなってきている。延命治療の是非やQOL(生活の質)に対する認識が多様になっている。こういった状況のときには、患者さんの自己決定型の医療を医療者が支援できるような体制が必要とされる。
しかし、疾病構造の変化から、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が多くを占めている現在では、この形では治療を成功させることが出来なくなってきている。これらの慢性疾患では、初期で軽症のうちは自覚症状がほとんど無く、患者さん自身が自己決定により生活習慣を改善し、薬を飲む気になってくれなければ治療することは出来ない。このような場合、3つめの協同作業型でなければ治療は成功しないことになる。
患者さんが薬を飲むのか飲まないのかは、患者さんが薬を飲むということを自分にとってどれだけ重要なことだと認識しているかで決まってくる。これも薬識の大事な部分であるが、薬を飲むことを重要なことだと思っていれば、飲み忘れることはとても少なくなるはずである。飲み忘れる理由はいろいろあるわけだが、その一つ一つの理由よりはその元となる薬識の方がコンプライアンスの向上のためには大きな要素である。
薬識を「自分にとって重要な薬である」というように変えてもらうためには、やはり患者さんが自己決定によって行動変容する必要があり、自己決定を促すためには的確なコミュニケーションと支援が必要となってくる。
日本人には「イイ子」特性を持った人が多い。例えば糖尿病の教育入院を例に挙げると、入院中はとてもコントロールの良い人でも、退院してからもそのコントロールを保てる人はわずかしかいない。それは、「イイ子」である患者さんが、病院内では医療者に対して「イイ子」になろうと行動するため、生活注意も守りコントロールも良くなるが、退院して日常生活に戻ると、会社の人々や家族など日常生活の中での人間関係において「イイ子」になろうとする。したがってお酒に誘われれば付いていき、食事に誘われれば付いていき、してしまい、血糖のコントロールは二の次になってしまう。
これは病識の欠如(不足)もさることながら、しっかりとした薬識が形成されてないために、服薬の重要性が相対的に低くなってしまい、日常生活を優先してしまうからである。自己決定による治療への動機付けがある場合には、日常生活の中にあっても病気の治療というもの認識、飲んでいる薬に対する薬識に変化があり、生活改善や服薬に対する認識の重要度を増すことが出来る。
治療への動機付けが強く出来るかどうかは、医療者と患者さんとのコミュニケーションの良し悪しに関わってくることになる。そして、お互いに持っている情報を見せあって、ケアの方針を交渉(negotiation)し、合意する。その後契約により患者自身が治療にあたることが大事になってくる。
これまでは医療者が持っている情報をどう開示したか、どのように患者さんに対して提供したかに重点がおかれていたが、共同作業型ではお互いの情報を交換しあう必要がある。患者さんから得る情報とは、患者さんの薬識であり、病識であり、患者さんにとってのQOLであり、患者さんの特性である。医療者側が治療に対する情報(薬剤師であれば薬に関する情報)のみを与えるのでは、共同作業型は成り立たない。この情報のやり取りにコミュニケーションがとても大切になってくる。
自由に歩き回って、出会った人と挨拶する。普段は無意識にやっていることでもあらためて挨拶と照れくさかったり、いろいろな気持ちを持つものである。日常的に患者さんと接するときも、自分は普通のつもりでも、相手は違う感情を持っているかもしれないということを体験してみる。
[グループ1]
薬局の窓口での例だが、ある糖尿病の患者さんがお酒をかなり飲みすぎてしまって、コントロールが悪くなり、医者にも叱られ、自分でも自己嫌悪を訴えていた。ところがそのとき、対応した薬剤師が、言葉とは裏腹な非言語の訴え(表情が暗かった)を感じとり、
「どうかなさいましたか?」
と聞いてみた。すると、実は身内の人がつい最近無くなったばかりで、その悲しみ、さびしさ、つらさも手伝って、葬儀から始まっていつもは控えているお酒を飲みすぎてしまったことを話してくれた。言語の部分だけに頼っているとこの話は聞くことが出来なかった。
話を聞くことが出来るか、出来ないかの差はものすごく大きい。
2人一組みになって、5m、3m、1.5m、0.5m(位)の距離をとり、向い合って挨拶をする。どの距離が一番快適に出来るか体験する。
[解説]
○社会的距離には4種類の距離がある。
2.向き
次の3通りに向い合って椅子に腰掛け、目と目をあわせて挨拶をする。
[解説]
○1、2、は視線をあわせるのに緊張を伴う。3が一番無難な方向。
○効率良く患者さんをさばくには1が良く、じっくりと話を聞くときには3が良い。
3.視線、沈黙
(ワークは省略)
二人で向い合い、目と目をあわせて30秒間見つめあう。その時、以下の点を守る。
○日本人にとって視線をあわせることはかなりの緊張を伴う。しかし、目を反らしてばかりいると信頼を得ることが出来ない。患者さんの様子を良く観察しながら、患者さんに負担をかけないような配慮が必要である。
○医療者は沈黙にたえることが出来なくてはならない。患者さんが葛藤のなかで心の整理をしているときなど沈黙が必要となることがある。沈黙にたえられるようになるためには(患者さんに気づかれないように)大きく深呼吸をして、その数を数えると良い。→効果的な沈黙
2人一組みで好きな距離で向い合って、お互いに声を出さずに、一方の人が空間のどこかを指さして、自分の指したい位置を無言で知らせる。もう一方の人は相手が指した空間を自分も無言で指さして、「ここで良い?」と聞き返す。お互いに無言のままでこれを繰返し、相手の気持ちが伝わったか、伝わったことを相手に返せたかを体験する。
2.アクションリアクション
2人一組みで好きな距離で向い合って、お互いに声を出さずに、一方の人が何かを相手に伝えようとする。もう一方の人は、相手の伝えたいことを出来る限り受け取ろうとして相手のアクションにリアクションを返す。これを繰り返しながら、気持ちが伝わったか伝わったときどう感じるかを体験する。
[グループ1]
つくばファーマシューティカルケア研究会
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