つくばファーマシューティカルケア研究会
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つくばファーマシューティカルケア研究会
第2回 定例会報告

  • テーマ:POSから始めよう〜基礎〜
  • 日 時:平成9年8月7日(木) PM7:30〜9:30
  • 場 所:つくばカピオ
  • 参加者:14名 薬局薬剤師/3名 病院薬剤師/10名 その他/1名

〈あいさつ:大野善則〉

薬剤師が、ファーマシューティカルケアを実践していく上で、POSという道具(ツール)を使ってみてはどうでしょうか。ここで、薬剤師にとってのPOSを考えてみたいと思います。担当者の業務の都合上、案内の内容を一部変更して、今日の会を進めていきたいとおもいます。まずはじめに、POSの基本的な概念の紹介、次に、POSについて考えることをグループワークしたいと思います。

〈POSから始めよう:渋谷憲司〉

“POS”という言葉は聞いたことがあると思います。いったい何?と思われる方もあるかと思いますが、まずは基本的な部分を今回は勉強していきたいと思います。
今日の参加者の中には、開局、病院の薬剤師、また違う職種につかれている方もいらっしゃると思いますが、「なるほど!」と思っていただければ幸いです。今後、内容的な部分に関してはまた研究会で取り上げていくとして、まずは基本から。

POSって何?

(1) アメリカのウイード先生が問題解決技法として提唱しました。
定義:患者の持っている医療上の問題に焦点を合わせ、その問題を持つ患者の最高の扱い方を目指して努力する一定の作業システムである。 日本には、聖路加の日野原先生によって紹介されました。

(2) POSは、Problem Oriented Systemの略で、訳すと、問題志向システムになります。「医療の行動システム」のことで、つまり方法論、道具(ツール)といったところです。医療の質を向上させるための道具と考えていいかと思います。
ポスと読まれる方もいますが、コンビニのバーコード物品管理システムと は違うので、ピーオーエスと呼びたいと思います。

(3) POSを導入している職種としては、医師、看護婦、理学療法士さんなど で、薬剤師は?というと、まだまだ取り入れていない所が多いというのが現状かと思います。

(4) あくまでPOSは考え方であって、イコールあのSOAPというわけではありません。SOAPについては後で記載。つまり「問題点を捉えてケアしていく考え方」と考えればいいと思います。薬剤師が、どう患者さんの問題点を捉えて、ケアしていけばいいのが重要であって、その方向をうまく整理してくれる道具です。その問題点の捉え方と薬剤師ができるケアについては、色々と議論の余地はあると思いますが今回は省略します。

POSは簡単に考えよう

(1)POSの基本構造(骨組み)の底流には、問題解決過程があります。情報の収集、 問題の明確化、計画立案、実施、というサイクルです。実は、よくよく考えてみると、日常私達もよく使っているのではないでしょうか。

(2) 問題解決過程で大事なことは、「プロブレムごと」にプロセスを踏むと言うことです。問題解決過程の途中でプロブレムが明らかになります。その明らかになったプロブレムごとに、その後の問題解決過程を行うのがPOSです。
具体的に少し話しをしますと、どうしてプロブレムごとなのかと言うと、患者さんはいろいろなことを話してくると思います。時には副作用の事や、はたまた自分の生活の事など…。何だかよく分からなくなったりしてしまいます。つまりうまく整理していければ何が問題なのかがはっきりしてきますね。
「えーこの患者さんは何がいいたいの?」
「この前と違うぞ!」
いった場合でも「プロブレムごと」に考えていけばうまく整理できます。どのプロブレムについてケアしていけばいいのかがはっきりしてきます。

(3)患者さんの状態、意識等は日々変化しています。その時の問題点ごとに整理していけば、継続したケアも可能となり、何よりも「ケアの目的」がはっきりとしてきます。POSの考えを用いれば、患者さんの健康問題についてうまく関われるのではないでしょうか。しかも効率よく。

SOAPって何?

(1)SOAPとは、POSに基づいて行なったケアの記録の仕方です。ここで大事なことは、POSの基本構造をよくおさえておくことだと思います。 あまり、深く考える必要はありません。きちんと骨組みさえできていれば簡単です。

(2)
S:主観的情報(患者さんの声、訴え)
O:客観的情報(検査データ、バイタルサイン、 薬剤師から見た患者さんの 様子、しぐさ)
A:問題の明確化(SとOから分析し考えられること)
P:計画立案(問題解決のための手段)

SOAPは、POSの内容を基本構造を基に、プロブレムごとに、整理し、記載していこうということです。

(3) 補足的ですが、POSを進めていく上で有効なものを簡単に紹介します。

データベース
正確なアセスメントをするには、患者さんの色々な情報が必要になります。より良く、効率よく集めるためにデータベースを整理する必要があります。例えば、患者さんの家族歴、薬識、社会的背景等もうまくまとめていくとメリットがあるのではないでしょうか。
プロブレムリスト
その時点で患者さんが持っている問題点、患者さんの問題点の変化が経過的に、一目で把握することができます。誰が見ても、その患者さんの問題点がわかるという目次の役割を果たしますし、POSにとっては、このプロブレムリストが大きな特徴にもなります。
初期計画
最初の計画です。これから、患者さんの問題点を解決するための取り組む姿勢と考えて下さい。患者さんのプロブレムは色々と変わっていきます。その出発点と考えていただければいいと思います。

POSのいいところって?

(1)患者さん中心である。
(2) 患者さんが見えてくる。(症状・意識の変化)
(3) 薬剤師としてできるケアが見えてくる。問題点がわかっているのでケアもし易い)
(4) 質の向上に役立つ。薬剤師の業務も変わる。

POSみんなで使おう

(1)WHOのファーマシューティカルケアの定義では、薬剤師の行動哲学として、患者さんのQOLのために「結果」を出し、「責任」を持つことが述べられて います。薬剤師がPOSをうまく使っていけば、質の高い、しかも、継続したケア、患者さんの意に合ったケアが提供でき、“薬剤師が提供できるケア”の確立に少しでも近づけるのではないかと考えます。

(2) 病院、開局の薬剤師、他医療スタッフ間で、この同じ道具(ツール)を使うことにより、連携もはかれ、患者さんに対しても、継続したケアが実践できるというメリットもでてくるように思います。同じツールでコミュニケーションもうまくとれてくるのではないでしょうか。そして、患者さんとも。

(3) まずはやってみましょう。それが一番です。実践してみると、段々患者さんの見方とか接し方とかもわかってきます。いろいろな経験が上達の早道のように思います。まだまだ試行錯誤ですが、POSをみんなで有効に活用していければと思います。

参考

〈グループワーク〉

第一グループ

(1)POSを始めるにあたって
・ 気負いがある
・ 薬剤師としてケアできる問題点がわからない

(2) 病院と開局の薬剤師のPOSの違い
・ 客観的に患者さんの捉え方が違う
・ 開局の場合、対面だけの情報収集は難しい。その際、カウンセリング的なテクニックが必要となる。

(3) 薬剤師個々でまったく違う。熟練を要する。

(4) 世の中で薬剤師がどんな人なのか知らない人が多いので、何ができるのかもっとアピールする必要がある。

(5) POSは患者さん中心ではなくてはならない。病気中心ではない。

第二グループ

(1)薬剤師とて、どこまで記録すればいいのか、範囲が難しい。

(2)POSのいいところは、教育的効果、学習的効果がある。先輩から後輩へ論理的に伝わる。

(3)開局の場合、薬からしか情報が得られない。「O」の部分の情報が得にくい。

(4) 薬は色々な使い道があるので、何のために使用しているのかが分から ない時がある。患者さんに聞いても分からない時もある。その場合、患者さんが、病気のこと、薬のことを知らないこと自体が問題点になっている。そこをケアしていく。

(5) 複数で関わるにはPOSは大切である。

(6) 業務上、数をこなしていくには、書くだけの薬歴になっている。そのなかで、実行していくには、薬剤師のできるものが明確化するためにツールとして活用することができる。

〈質問・全体討議〉

開局薬局のほうが病院薬剤師よりPOSやりやすい のでは?
薬剤師がケアを行なう上では患者さん側の薬や病気に対する意識、関心度がその質を大きく左右すると思われる。その点、調剤薬局へ足を運んでくる患 者さんは少なくとも薬を受け取るという目的意識を持ち、そこへ行けば薬剤師がいること、薬についての情報が得られることを認識している分、開局薬剤師はより充 実したケアが行いやすい立場にあるのではないだろうか?もし、開局薬剤師の一番のWEAKPOINTである "O" の部分(病名、検査データ医師の治療方針等)の情報不足さえ解消出来れば、POSはより理想的な形で実現し、患者さんに質の高い医療を提供する上で、大きく貢献できるのではないか。

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