つくばファーマシューティカルケア研究会
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つくばファーマシューテイカルケア研究会
第1回 定例会報告

  • テーマ:服薬ケア・ファーマシューティカルケアについて
  • 日 時:平成9年7月10日(木) PM7:30〜9:30
  • 場 所:つくばカピオ
  • 参加者:11名  薬局薬剤師/7名  病院薬剤師/4名

〈あいさつ・趣旨説明:岡村祐聡〉

本日は多数お集まりいだだきありがとうございます。皆さんは、今の薬剤師の立場を考えたことがあると思います。残念ながら薬剤師は、社会において大いに認められているとは言い難い状況です。例えば、介護保険において、薬剤師は介護認定士の資格があると名前はあがっています。しかし、実際問題として、介護が必要となった時に薬剤師にアドバイスを求める患者さんはほとんどいないでしょう。患者さんから本当に信頼され「あの薬剤師の先生に話しを聞きにいこう」と多くの人達に思ってもらえるような状況をつくっていきたいと思います。
我々、薬剤師自身が勉強し、考え、アピールし、自分達で職域を広げていくしかないと思います。お上が「あなたたちこれをやりなさい」と仕事を与えてくれるものではないはずです。その辺を、もう少し考えていきたい。それが、この研究会をやっていこうとしたきっかけです。 研究会がどういう形で進んでいくか、まだ、決まらないうちに第1回が始まりました。インターネット等を大いに利用し、「日本の薬剤師は、今こんなことをしています」と、世界に向けて発信できできればいいなと非常に大きく構えています。

〈服薬ケア:岡村祐聡〉

服薬ケアは、服薬指導という言葉を使いたくないがために、考えついた造語で、出発点はそこにあります。しかし、その意味は、言葉を置き換えただけではありません。

服薬ケアの定義

服薬ケアとは、患者さんに使用される医薬品の管理、及び服薬に関わる事柄、認識、意志、人間関係など、服薬を中心とした治療とその反応に対するケアである。

〈解説〉

(1)患者さんに使用される医薬品の管理
通常薬剤師がやっている業務。薬の管理が、薬剤師の仕事の出発点となっています。
(2)服薬に関わる事柄
服薬指導とえば、病院の方は病棟業務、薬局の方は窓口で患者さんに薬の説明をしていると思います。その時、どうしても「物」にとらわれた説明になっていませんか。例えば、一日何回飲む、湿気があるから缶に入れて下さい。これらは、必要不可欠ですが、それに加えて、薬を飲むということに関わる事柄を全部ケアする。
(3) 認識
患者さんが薬を飲む、医者にかかるということを、どう認識しているのかは患者さんの服薬行動に非常に関わってきます。患者さんがどう認識しているか、それが薬識という言葉で提唱されています。薬識のなかには、病識も入いります。例えば、医薬分業の場合は、病院で処方箋をもらい薬局で薬をもらうという認識。めんどくさいと思うのか、薬に説明をしてもらえるのでうれしいと思うのか、どう認識しているかが重要になってきます。
(4)意志
医療の目的は疾病の治癒ではなく、QOLの向上です。昔(80〜90年前)は、ほとんどが、キュア、救命救急でした。現代は、ケア。薬を飲みながら生活をしていきます。患者さんの意志が非常に大きく関わってきます。自分の服薬に対してどういう認識をもっているのか、患者さんがどういう意志をもって薬を飲んでいこうと思っているのか。そのあたりをケアするということです。
(5)人間関係
例えば、働き盛りのお父さんが、病院に通って、毎日薬を飲みながら仕事をしている。それを、家族がどう認識するか。家庭内に人間関係の変調が起きてきます。また、てんかんの薬を飲んでいる人の中には、職場で知られるのをいやがり、かくれてトイレで薬を飲んでだり、わざわざ自費で薬をもらう方もあります。薬を飲むという事で人間関係に変調が起きます。この変調に関して患者さんがどう認識し、対処していくのか、その部分で関わっていくのも薬剤師のケアの部分ではないでしょうか。
(6)服薬を中心とした治療とその反応
医療の目的はQOLの向上ですから、薬を飲めばいいだけではありません。生活管理、生活改善も、我々薬剤師がケアをしていく必要があります。薬を飲もうとしている患者さんがどう反応するか。うれしいのか、いやなのか、いやいやながらでも努力しようとしているのか。反応の仕方によって、認識や意志が変わってきます。これも、当然ケアしていく対象になります。
服薬ケアにおけるケアとは何をするのか情報提供し、物の管理や感情の整理を助け、患者さんの自己決定による行動変容により、薬物治療やそれに伴う生活改善が成功するように支援すること。
(1)感情の整理
患者さんの認識、意志はすべて感情に依存します。患者さん自身が感情を整理できないと行動変容も起きません。感情の整理を薬剤師がケアする。ここが、服薬ケアで一番大切です。
(2)患者さんの自己決定による行動変容
人間は自分で決定し、行動を変えることかできます。本気で薬を飲んで、本気で病気を治したいと思えば、コンプライアンスは良くなります。きちんと服薬しない理由を聞くと、忘れました、夜は接待があるので。理由はいろいろですが、患者さんが本気で薬を飲もうとは思っていないのです。病気は治したいと思っているが、薬を飲むのはめんどくさい、薬を飲むのはいやだ、と心のどこかで思ってたりします。これに対処しなければ、コンプライアンスは上がりません。
(3)薬物治療や、それに伴う生活改善が成功するように支援する。
だだ単に薬をのんでいれば良いのではなく、生活改善が伴わなければなりません。薬物治療と生活改善。行動変容するのは患者さん自身ですが、この両方が成功できるよう支援していきたいと思います。

服薬ケア三種の神器

(1) POS
服薬ケアに役立つのがPOSです。これは、別の機会に詳しくやります。
(2) 薬識
患者さんは服薬行動をどう思っているか。薬識が重要になってきます。患者さんが望むQOLの目的地(自分の生活を維持していきたい、こういう毎日を送りたいと思っている患者さん理想的な状態)と、現状は多少違ってくる。理想に向かって患者さんはいきたい。その時に、薬を飲むという行為をどうとらえているか、これが薬識です。現実の患者さんの薬識を理想的な薬識に近づけていくよに行動変容する必要があります。この行動変容を支援するのが薬剤師の仕事です。
理想的な薬識と現実の薬識の差がプロブレムです。例えば、慢性疾患の患者さんの場合、自分の飲んでいる薬の事を完璧にわかっています。薬効を聞けば、だいたい知っています。飲み方も完璧。話しを聞くと忘れることはあるけどだいたい飲めます。今までの服薬指導の考え方だとそれ以上言うことがなくなってしまいます。服薬指導料をとっているし、窓口でいったい何をするんだろう。やることかなくなるという状況が起きてきます。
しかし、薬識に注目すると、薬識が必ずいつも理想的な状態にあるわけではありません。患者さんの理想の薬識と患者さんの現状の薬識の差を、薬剤師が専門の目から見たプロブレムとして、取り上げる事によって、言うことがない、説明する事がないということは起きません。これをPOSの考え方に沿って、記録をとりながらプロブレムを追跡していくことにより、窓口で何もする事がないということはなくなります。
(3) カウンセリングテクニック
薬識は、患者さんの心の中にあります。患者さんの感情を引き出し、心の中にある薬識を引き出すには、ある程度の技術が必要になります。ヘルスカウンセリングの考え方が薬剤師にも取り入れられてきています。薬識を聞き出すことができて、その薬識をPOSで考えていくことによって患者さんの行動変容を支援していくことができるのです。結局、服薬ケアで、何が変わったのかといえば、「事柄」の着目から「感情」への着目に変わったことです。これによって服薬指導がやることがないという状態から抜け出して、この患者さんとどう関わっていこう、どうケアしていこうを一所懸命考えなくてはいけない状態になる、これが重要になことです。

まとめ

服薬ケアとは私自身、ファーマシューティカルケアの本来の意味であると考えています。実際、私たちは、ファーマシューティカルケアという言葉を本当に正しく認識して、患者さんと相対しているでしょうか。ちゃんと我々はファーマシューティカルケアをしていますよと理念をもって医療をしているでしょうか。私は、しばらく「服薬ケア」という言葉を使っていく価値はあると思います。これをきっかけに、いろいろみんなで考え、業務に生かしていただきたいと思います。

◎詳しくは、 「服薬ケア研究所」 のホームページをみて下さい。


〈ファーマシューティカルケア:仁礼久貴〉

ヘプラー教授の定義

ファーマシューテシカルケアとは、患者のQuality of Life を改善する、はっきりとした結果をもたらすためにとられる薬物療法を、責任をもって遂行することである。その結果とは、
  1. 疾病の治療
  2. 患者の症状の除去または軽減
  3. 疾病の進行を止めたり、遅らせたりすること
  4. 疾病または症状の予防
これらのプロセスを通じて、薬剤師が患者や他の医療職種の人々と協力し、当該患者に特定の医療効果をもたらす治療方針を計画、実施、モニターすることになる。

WHOの定義

ファーマシューティカルケアとは、薬剤師の活動の中心に患者の利益を据える行動哲学である。ファーマシューテカルケアは患者の保健及びQuality of Life のため、はっきりした治療効果を達成するとの目標を持って薬物治療を施す際の薬剤師の姿勢、行動、関与、関心、倫理、機能、知識、責務並びに技能に焦点を当てるものである。

中木高夫氏の定義

ファーマシューティカルケアとは、健康問題そのもののうち薬物に関するものと、健康問題に対する人間の反応のうち薬物に関するものを診断し治療することである。

クリニカルファーマシーとファーマシューティカルケア

(中原 保裕氏 アポプラス研究会(1994.9.8.)講演より) アメリカのクリニカルファーマシーとは、病院にも薬剤師が必要であるということを立証するための勇気あるアメリカ人のチャレンジだった。クリニカルファーマシーとファーマシューティカルケアの間には、知識、技術、に特に違いはない。治療効果にインパクトを与えなくては何ともならないという気持ちでクリニカルファーマシーを実践することがアメリカ流のファーマシューティカルケアである。やったことに満足していいるのではなく、どう医療が変わったのかということを示さなければならない。

〈質問〉

Q:ファーマシューティカルケアは薬剤師がやるのか。薬剤師はファーマシューティカルケアをとりまく一部にすぎないのか。

A(仁礼):基本的には、薬剤師のことと考えていいと思います。WHOの定義は、薬剤師の行動哲学ということで定義している。薬剤師がどう取り組むかという理念が、ファーマシューティカルケアであると、いえるのではないか。

A(岡村):中原さんの意見は、病院薬剤師の視点で見ている。ファーマシューティカルケアが、病棟業務に関連して考えられていることが多いと思うが、実はそうではない。ファーマシューティカルケアという言葉は、医師のメディケア、看護婦のナーシングケアに対して定義したのが出発点のようである。薬剤師のやるケアは何か?と考え決めてきたことが歴史的背景と思う。服薬ケアという言葉は薬剤師の行うケアに限定しない。入院で看護婦さんが服薬管理をしている場合、看護婦さんが服薬ケアを行う。ただ、あくまでも薬剤師が、服薬ケアの中心的責務を担うと考える。ファーマシューティカルケアと服薬ケアの違いはそこにある。

〈グル-プワーク〉

2つのグループに分かれ、ファーシューティカルケアについて、約40分間話し合いました。

〈グル-プ発表〉

第1グループ
ファーマシューティカルケアとは、現在の患者さんのQOLと理想のQOLの間を埋めるために薬剤師がやる事。
まず、個々の患者さんの理想のQOLを共有する。 ファーマシューティカルケアを行うために、患者さんに理想のQOLをイメージングしてもらうケアが、ファーマシューティカルケアの第一歩である。
医師に言えなかった事を薬局で話していく患者さんが多い。医師と患者さんの間に入り、クッションとなる役目がある。また、患者さんが自分の思っていることを医師にきちんと伝えられるように支援することも必要ではないか。
第2グループ
ファーマシューティカルケアとは、医師の管理下ではなく、薬剤師の責任においてケアする。薬剤師自ら、患者さんのQOLのために責任をもてる分野、ケアのやり方というもの。
何を担うのか。医師の手薄な部分を担当する。
  1. DI情報(薬そのものに基づくもの)
  2. 服薬行動そのものに焦点をあてたケア
病院は、医師へのフィードバックがしやすい。薬局での医師へのフィードバックとしては患者さんに自分から医師に話してもらうようにもっていく。(患者さんの行動変容の支援)

〈質問・全体討議〉

Q:理想的なQOLを患者さんにイメージしてもらうということは、具体的に、どうもっていけばよいのか?
A: 理想のQOLは患者さんの中にある。コミュニケーションが重要。専門家として、問題の解決方法を示し、複数の選択肢のなかからイメージしてもらう。ただし、決めるのは患者さんである。医療者は、これが一番いいと決めてしまいがちではないか。

「患者さんが医師に話しができるよう支援すること」について。患者さんに押しつけて逃げていないか。薬剤師の方から医師に話した方がよい場合があると思う。薬物治療が適切か、開局薬剤師であっても医師と協議する必要があるのでは。

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